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若いあなたは、今後の長い人生におけるお金の収支について考えたことはありますでしょうか。
今後の日本では予想されるインフレによる実質的な給与収入や年金の減少が見込まれており、収支は赤字になる可能性が高いのです。あなたはその不足を補うための、ライフプランに基づいた自助努力による資産形成を考えなくてはならないのです。

人生は長い
厚生労働省の調査によると、日本人の平均寿命は男性で80.98年、女性で87.14年となっています。これは1960年時点と比較すると、実に約15年も伸びているのです。医療技術の進歩もあり、今後の日本人の平均寿命はますます伸びていくでしょう。
その人生の過程で、多くの人は65歳くらいまでに定年退職などにより現役を引退し、その後の生活費は年金が主体となります。
しかし、残念ながら老後のあなたが受給できる年金の額は、ゆとりある生活を送るためには明らかに不足すると想定されています。すでに年金生活を送っている人ですら、そのような状態になっているのです。
さらに、平均寿命は伸びていくにも関わらず、不足する年金を補うための資産形成が可能な現役世代の期間は、さほど伸びないと考えられています。結果、平均寿命が伸びれば伸びるほど現役時代の蓄えを切り崩す老後の期間が長くなり、生涯支出は拡大する一方となるのです。

ライフプランを考えよう
一昔前の日本は、右肩上がりの経済成長と人口増加に裏付けされた終身雇用、年功序列の賃金上昇、手厚い退職金と年金の支給が当たり前であり、勤務先や国の制度というレールに乗ってさえすれば老後も金銭面では十分にゆとりある生活が可能でした。しかし、上記のすべてが覆ったといっても過言ではない現在の日本では、もう勤務先や国にも頼れず、乗るべきレールもないと考えておいた方がよいでしょう。
少なくとも金銭面では、一人ひとりの自助努力が求められる世の中になったということです。だからこそ、若いうちに一人ひとりが人生計画や想定される生涯収支に基づいた資産形成を考えておくことが重要なのです。
あなたや家族がどのように生きていくかについて立てる人生計画、これは広くライフプランと言われています。
例えば、何歳までに結婚して家庭を設けるか、それとも生涯独身か、結婚後は共働きか否か、いずれは家を買うか否か、子供は私立中学に進ませるか、それとも高校まで公立にするか…などであり、ライフプランは人それぞれによって異なるものです。
まず、ライフプランを設計する要素として、ライフイベントを想定しておくことが必要です。そして、ライフプランには想定されるライフイベントで生じるであろう支出を踏まえた収支計画を盛り込むことが重要です。


ライフイベントに必要な資金
ライフイベントとは、人生における大きな出来事のことであり、就職や結婚、子供の進学、住宅購入、子供の結婚、退職など様々なものが挙げられます。そして多くのライフイベントに共通するものが、「お金がかかる」ことなのです。その中でも三大資金は、「住宅資金」「教育資金」「老後資金」です。ライフプランを考えていく上では、少なくともこの三大資金について、どのタイミングで、どの期間に渡り、どの程度の資金が必要なのかについて、シミュレーションしておきたいものです。
まず、「住宅資金」についてです。不動産経済研究所による調査では、2017年の全国のマンションの1戸あたり平均価格は4,739万円でした。あなたがこの価格でマンションを購入した場合の支出を想定してみましょう。購入時に頭金の相場とされる20%の約950万円を支払い、残額約3,800万円を金利1.5%・返済期間30年でローンを組んだ場合、月当たり約13万円の返済が向こう30年間にわたって生じるのです。
続いて、「教育資金」について文部科学省によるデータに基づき見てみましょう。仮にあなたが一人の子供を幼稚園から大学まですべて公立に通わせた場合、要する費用は約850万円です。また、すべて私立に通わせた場合は約2,300万であり、平均すると子供一人で約1,575万円もかかるのです。子供が二人いれば、下の子が卒業するまで約3,150万円の支出となるのです。
最後に、「老後資金」についてです。厚生労働省の調査によると、夫が平均的収入(平均標準報酬月額約42.8万円)で40年間勤務し、妻は夫の就業期間中にわたり専業主婦だったと想定した場合の厚生年金の受給額は、月額平均22万円です。一方で、多くの人が「老後のゆとりある生活費」として考えている月あたりの平均額は、約35万円という結果が出ています。つまり、ゆとりある老後生活を送るために、収入が年金だけでは月当たり約13万円も不足することになるのです。
言い換えると、ゆとりある老後生活を送るためには、退職後20年間生きたとして年金生活に入る前に約3,120万円(月額13万円×12ヶ月×20年)の貯蓄が必要となるのです。これに自宅のリフォームや車の買い替えなどを加味すると、さらに多くなるでしょう。大卒で35年以上勤務した場合の退職金は約2,300万円と言われていますが、この金額ではゆとりある老後生活を送るためには足りません。実際に、年代別の金融資産残高に関する調査によれば、60歳代であっても老後に必要な資金を保有している世帯は3割台程度という結果が出ているのです。
このように、ライフプランには退職前のライフイベントに関する資金の備えに加え、老後の生活設計も視野に入れておかなければなりません。そして、その一連の収支を踏まえた資産形成を若いうちから着実に行っておく必要があるのです。

現預金の価値は減少する可能性大
資産形成の手段として、あなたはまず現預金の貯蓄を思い浮かべるかもしれません。事実、家計の金融商品保有額は現預金が過半を占めているのが現状ですが、今後は資産としての現預金の価値は目減りしていく可能性が高まっています。
これまでの日本経済は、デフレの時期が長く続きました。デフレとは、モノやサービスの価格が継続的に下がり続けていくことであり、この経済状態下では現預金が相対的に有利な資産です。
しかし、アベノミクスと呼ばれる経済政策が一定の効果を出しつつある日本経済はデフレの状態を脱却しつつあり、今後、長期的にはインフレになると予想されます。インフレとはデフレの逆で、モノやサービスの価格が継続的に上がり続けていくことです。この経済状態化では、現預金は他の資産と比べて相対的に価値が下がります。
例えば、手元のお金が1,000円あり、あなたはこのお金でパンを買うとします。デフレ下ではパン一斤の値段は200円だったので1,000円あれば5斤買えましたが、インフレとなりパンは一斤250円となったため、4斤しか買えなくなってしまいました。これは3,000円の購買力が下がったということあり、パンの価値に比べお金の価値が下がってしまったのです。このように、インフレが進むにつれて現預金の購買力、すなわち資産価値は下がり続けていくのです。

今から出来る対策は?
ここまでお読み頂いたうえで、ご自身の現在の資産および今後見込まれる収入とライフイベントで必要なお金を比較してみた結果、ご自身のライフプランおける資金収支について不安に感じていませんか?
この対応策として収入を増やすことが挙げられますが、人手不足とは言え成熟した日本の産業経済では給与収入の大幅な伸びは期待しにくいですし、副業するにも時間的・体力的な限界があります。また、支出を切り詰める一方の人生が本当に幸福なのか、甚だ疑問です。
ここで選択肢のひとつとして、お金に働いてもらうこと、すなわち有価証券投資による資産運用が挙げられます。
有価証券投資による資産運用は、今後インフレが進むと予想される日本経済下では預貯金よりも有効な資産形成手段と言えます。なぜなら、インフレが進むことにより投資対象の資産価格も上昇するため、現預金とは異なり資産価値が相対的に目減りすることは理論上ありません。また、日本とアメリカでは過去40年間で株価上昇率が物価上昇率を大きく上回っていたという実証結果もあるのです。
ただ、有価証券投資と聞くと、損しそう・お金持ちがやること・難しそうなどと、ネガティブなイメージを持つ方も多いと思います。
確かに有価証券投資に元本保証はありませんが、最近の投資信託は数千円程度から始めることが可能であり、それを少額でも毎月積み立て続けることで、最終的に元本割れするリスクの軽減が可能です。また、「つみたてNISA」や「確定拠出年金(DC)」、「iDeCo(イデコ)」などの制度を用いて投資信託を購入した場合、運用益に対して税制優遇措置が設けられています。
若いうちから分散投資の一つとして投資信託などの有価証券投資により、ライフイベントに向けた資産形成をコツコツと行うことが重要なのです。
まとめ

